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想像すらも越えた世界

楽しまなきゃ損じゃない?

TTT戸惑いの惑星の円盤化を求める

V6 20th Century 坂本昌行 長野博 井ノ原快彦

 

初めてChange Your Destinyを聞いた時、なんて儚く寂しいメロディーだろうと思った。
何もわからないのに心にぽっかり穴が開いたような気持ちになった。

 

トニセンの3人芝居は、事前に全く新しい形の舞台だと聞いていたものの、予想を超えて新感覚の舞台だった。ふわっと始まってふわっと終わって、それでいて笑いと緊張の緩急がしっかりしていて、なぜだか物語の随所で感覚的に涙が出てきた。*1大学の文学部で演劇を専攻する身としては教授にも舞台に厳しい友人達にも勧めたいと思った。

 

トニセンの日常の雑談のような場面から始まり突然イノッチがハセッチになってなんだこれと笑っているうちに深刻な展開になってゆく。

今回はもちろん3人が主役で3人共が輝いていたけれど、ストーリーとしては長谷川が中心の舞台であったようにも感じる。そんな長谷川を井ノ原さんはなんて器用に演じているんだろう、というのが観劇中ずっと抱いていた感情だった。井ノ原さんの、演技をしているのか素なのか分からないような自然体なお芝居が私は大好きだった。井ノ原さんが歌がうまいってことはもう我々の常識なんだけど、それにしても声の厚みがまた増したようだったし、つらそうに歌う歌い方が本当に似合っていた。年老いた教授の声もよく出せるなぁと実に驚いた。あと目がきゅるきゅるで純粋で、今にも消えてしまいそうな長谷川が見ていてすごく心が痛かった。40歳にもなってあの目の輝きはなかなか出せるものじゃないよほんと。
長野さんに関しては皆さんおっしゃる通りほんと歌がうまくなってる…長野さんの繊細な声ってすごく物語を美しくさせるからうれしかった。あと何といってもあのマダムの破壊力。あれでそれまでの重苦しさを全て持っていった感がすごい。こういう胡散臭いババアを演じるのに長野博の右に出る者は果たして現れるのか。妙な既視感を覚えたけれどそれはきっと知る人ぞ知る大御所演歌歌手のアレだろう。あと説明口調でだらだら話すセリフばかりで加えてホルンって…そりゃノイローゼにもなるわな…と。尊敬する…。それでいて坂本さんとの掛け合いとか息ぴったりでうおおおぉ現存する最古のシンメ~!!と思った。
そして坂本さん。自担なので終始目で追ってしまって感想も長くなってしまうのですが、とにかくステージを通して隅々までこの人は舞台のスポットライトを浴びるために生まれてきたんだというオーラがすごかった。*2すべての動きが、間が、ステージを効果的に見せるために完璧に計算しつくされていて無駄がない。この人の出るステージは死ぬまでずっと見続けないと絶対に自分の人生がもったいないと思った。この先何があっても見ないといけないと思った。最後にぽろぽろと泣いていた坂本さんはもちろん印象深かったけれど、私が他に心に残ったのは坂本さんが由利の母をやっていたシーン。今回私は幸運に恵まれた席で観ていたため、この時坂本さんは私の目線のすぐ先にいました。あれはもちろん笑うシーンだったし本人もそのつもりでやっているのだろうけど、私はなぜだか笑えなかったんです。すっごくおもしろくてお腹を抱えて笑いたかったのに、あまりに近かったせいで坂本さんの舞台に立つことへの覚悟や姿勢をひしひしと感じ取ってしまって、あぁ、私が子供の頃から好きだった生の舞台の世界を、私の大好きな人も偶然か必然か愛していて、死ぬまでこの世界で輝き続けるつもりなんだ、と心が震えた。*3あ、でもチンピラマサに関してはただただ似合いすぎてかっけぇ!マサかっけぇ!!やべぇかっけぇ!!!の気持ちで笑ってました。3人ともに言えるけど役のふり幅すげぇよ。それから、いろんな方がおっしゃっていることですが、坂本さんにはロマンチックで情熱的な恋が似合う。それでいて儚く切ない恋が似合ってしまう。あぁ悲しい。*4

 

今回使われた楽曲はどれもすごく好きでうれしかったけれど、中でも最優秀賞を選ぶなら私としてはやはり「ちぎれた翼」だった。トイレの扉を開けるときの輝きと音響の効果に震えるくらいに惹きつけられ、そして三度開けた瞬間の光る水面と長谷川の登場とともに始まるちぎれた翼にはやられたと思った。ちぎれた翼はこの瞬間のためにつくられた曲なのかと納得してしまう世界だった。ちなみにですが今この文章を私は飛行機の上で書いていて窓際から雲一つない空と海との境目がよく見えています。空と海に引き裂かれた誓い。こんなにも神秘的で詩的な世界観を違和感なく歌にできるトニセンも脚本に織り込めるG2さんも恐ろしい。そして坂本さんの声量が無双すぎてハモりなのか主旋律なのかもはや分からなかった。
「オレキミ」に関しては、今までPVなどで見る愉快なトニセンと謎の演出が時折悲壮感をも漂わせる歌詞にそぐわないなぁと思っていたから*5、やっとわたしの観たかったオレキミの演出が見れた気持ちでした。どの曲にも言えるけれど、本当に既存の楽曲のイメージを見事に一掃していった。そして今回、ほとんどの人が初めて生で不惑を耳にしたわけですが、もうゾワゾワっとする感覚がすごかった。不惑の感情が爆発するようなエネルギーがすごかった。

そして「Sing」のミュージカルスターはすごくのびのびしていて全力で楽しそうで観ていて最高に幸せだった。

宛名のない手紙は私たちの知らない方法で宛名の主にたどり着く。奇跡でも起こらない限り届かない手紙は三池に届いた。変えられないはずの運命は変えられた。
この時ぼろぼろと泣く三池をまたも私は目の前で見た。手紙を読む声がだんだん弱くなり、鼻をすする音が混ざり始め、声すら出なくなった三池。涙をサッと拭い去ってから歌い始めた「days-tears of the world-」はこれまで聞いたdaysの中で一番涙が似合っていた。tears of the worldはそういう意味だったんだ、と納得できた。それに印象に残ったのが、daysのメロディーに「Change Your Destiny」の旋律がうっすらと混ざっていたところ。心が震えるくらいきれいなアレンジで、たぶん一瞬だったけれど何度でも聴きたいと思った。*6


三池は再び似顔絵を描けるようになって、由利は研究を続けることになった。最後の場面で三池の描いた長谷川の似顔絵、それがどんな絵だったのか私たち観客には見えませんでした。*7でも、その絵を人格喪失症だった長谷川はちゃんと自分の顔だと認識した。きっと三池の画風はそれまでと変わっていたのだろうし、キャンバスにはありのままの長谷川の顔が描かれていたような気がしてなりません。笑顔の長谷川が私には見えるような気がしたんです。*8
そして今回唯一のオリジナル曲「Change Your Destiny」。この破壊力がものすっごい。歌詞と本編のリンク度が感動的だし*9、この舞台で語られた運命だけでなくこれから先の3人の運命にも思いを馳せながら聞き入ってしまう。本来なら切ないはずの結末が、最後に「Change Your Destiny」を歌うことで3人の未来に光が見えたような気がしたのだ。舞台の序盤、はじめてこのメロディーを聴いた時に抱いた切ない感情が塗り替えられて美しく力強い曲に感じられた。幾度となく運命を変えてきたであろうトニセンが歌うのにふさわしい曲だとも思った。もともとこの曲は、作曲した彼女の三池への気持ちが溢れている優しく切ない曲だと思うのだけれど、そこへさらに長谷川の初恋の彼女を思う気持ち、由利の妹を思う気持ち、そして三池の彼女への愛が重なって、最後に歌った時には初めに流れたメロディーよりも深みが増して私には聴こえたのだと思う。彼女は二度と会えないと思っていた先輩に、運命を変えて再び巡り会えて幸せな人生だったと言った。長谷川、由利、三池、三者三様に失ったものは計り知れないけれど、まだ未来は明るいと思いたい。彼らの人生に共通して存在した女性は悲しみばかりでなくもっと大切な何かを残したのだと、彼女の存在は絶対に必要だったのだと思える、そんな結末だった。

 

結局、どこからどこまでが長谷川の小説なのか、ハッピーエンドなのかバッドエンドなのか、そもそも全部夢なのか、一度観ただけでは分からなかったけれど、戸惑いの惑星なのだからそれはそれで構わないんだと私は思っています。彼らがこの惑星で永遠を奏でるから私達も永遠に戸惑えばいい。魔法にかけられたような気持ちであっという間の2時間*10を体感して、これだ、これが私の好きなトニセンの世界なんだ、と思いました。

全員不惑にもなって、新しい舞台を作り出すと言い出して、ノイローゼになりながら新しい楽器に挑戦するおじさんたちを見て、この人たちの未来はまだまだ止まらない、私はまだまだこの人たちの創り出す世界を追っていかないといけないと感じた。

トニセンはすごいぞ。何度も言うけどトニセンはすごい。
言葉にならない感動を何とか言葉にしようとしたけれど、誰にも表現できないくらい素敵な世界。これがトニセンの創り出すエンターテインメント。

*1:気付いたら涙が出ていた感覚、ビニールの城の時に感じたのと似てる。

*2:超絶地味な衣装なのにあのミュージカルスター感なに。

*3:MURDER for TWOの時にも似たような感覚はあった。

*4:なお私が舞台を見終わって最初に発した言葉はたぶん「三池と行きずりの恋してぇ…」だった気がする。

*5:もちろんPV大好きです。

*6:どの曲も生演奏とアレンジが素敵すぎてオリジナルサウンドトラック早く出してください。

*7:そもそも小道具のキャンバスは白いままだし。

*8:この点についてはいろんな解釈はありますが、私は3人が幸せになれる解釈をしておきたいと思います。

*9:長野くんの話していた"人はどれかの星と繋がっている"って話と"星と星が繋がる〜"みたいな歌詞がリンクしてると気付いたときうわぁってなった。ここ好き。

*10:何ならいまだに魔法が解けてない気持ち。永遠を奏でるトニセンすごい。